(転生パラレルの鉢雷と竹谷のハナシです)










きっかけは、クラスメートのこの言葉。
『三郎!今度の野球部の練習試合、応援に来いよ!』
 
 
まさか、再びお前と出会えるとは、思ってもいなかったーーーーーー
 
 
 
 
(すげぇ人・・・)
ただの練習試合でも、ここまで人が集まるのか、と三郎は周囲を見回した。
今日は、市立大川高校と大川大附属高校の野球部の練習試合の日。
試合の行われる大高(市立側の通称)のグラウンドには、両校の応援に大勢の人々が訪れている。
もちろん、三郎もその一人である。
一週間ほど前に、仲の良いクラスメートの野球部員から、試合の応援に誘われたのだ。その日は特に用事も無かったので、三郎は快諾して、今日に至る。
春先なので、まだ暑さは酷くないが、天気が良いためか日差しが強く照りつけている。
「三郎!」
と、校舎の方から、自分の名を呼ぶ声がした。
「雷羅」
振り向けば、幼馴染の不破雷羅が、こちらに向かって走ってくる。
自分によく似たその顔は、走ってきたせいか、頬が少し紅潮していた。
「ゴメン、委員会が長引いちゃった・・・、試合まだ始まってない?」
「いや、まだ大丈夫。ギリギリセーフ」
さすがに一人で見に来るのは気が引けたので、ちょうど今日委員会ミーティングがあった彼女を誘ったのだ。
雷羅自身も、野球に限らずスポーツ観戦は大好きであり、喜んでそれに応じた。
「そろそろ選手がアップ始めるんじゃないかな」
電光掲示板に掲げられている時計に目をやり、三郎は呟いた。
その証拠に、両校ベンチ前では選手たちが続々とキャッチボールを始めている。
部活に所属していない三郎にとっては、その光景は新鮮だった。
と、アップを始める選手たちの中に、今日誘ってくれたクラスメートの姿を見つけた。
「お、いたいた」
手を振ると、それに気付いたのか、クラスメートも手を止め振り返してくれた。
邪魔にならないよう、話しかけるのは止めておく。
「あ、ねえねえ三郎、電光掲示板に名前出たよ」
雷羅が、服の裾を引っ張って知らせる。
「どれどれ」
チラリと目をやり、クラスメートの打順を確認する。
「お、アイツ3番じゃん、すげーなー」
「もう、三郎ってばちゃんと応援してあげなよ?」
「わーかってるって、雷羅は心配しすぎ」
そして、相手校の方にも目をやる。
あまり附高(私立側の通称)の野球部には興味が無かったため、特に誰かを知っているというわけではなかった。
とりあえず、ざっと見ておこう。
知ってるヤツいないし。
 
そう、思っただけだった。
 
 
 
・・・ある名前を目にしたとき、俺は全身を走る強い衝撃を覚えた。
 
 
 
「え・・・」
 
 
 
「どうしたの?三郎、そんなに驚いた顔して」
雷羅の声も、三郎の耳には届いていなかった。
 

 
 
4番  竹谷

 
 
 
瞬間、三郎の視線は附高野球部のベンチ前に向かっていた。
(何焦ってんだよ、別に竹谷なんてよくいそーな名字だろ・・・?)
気持ちとは裏腹に、目が一人一人選手の顔を確認していく。
(でも、真横にいる雷羅がいい例だ)
自分の中の『自分』が認識した、大切な存在。
(なら、アイツだって・・・)
「三郎?」
様子がおかしい幼馴染の姿に、雷羅は少しの不安を覚えた。
恐らく、表情に出ていたのだろう。
(落ちつけよ、俺ーーーーーー)
 
 
ピタリ、と、目の動きが止まる。
吸い込んだ息が、吐き出せないくらいの衝撃。
グラウンドと外とを分ける金網に、思わず掴みかかった。
「ちょっ・・・三郎!?」
突然の行動に驚く雷羅をよそに、三郎はただ一点に見入っていた。
「ハチ・・・」


脳裏に蘇る、遠い記憶。 
あそこで笑っているのは・・・

 
 
『三郎!』
 
 
「・・・全然変わってねーじゃねーか」
「え?何が?」
金網を掴む手が、わずかに震えた。
「・・・雷羅、今一番手前でキャッチボールしてる、背の高いヤツ誰かわかる?」
「え・・・ああ、附高の竹谷君?もちろん知ってるよ。強肩、強打で県内でも有名だもの」
「俺、アイツと友達になりたい」
「ええ!?ってちょっと三郎!何で泣いてるの!?」
その言葉に、ようやく自分の頬を滴が流れていることに気付く。
ああ、間違いない。
「それに、いきなり友達になりたいって言っても、まだ話したことも無いのに・・・」
「大丈夫だよ」
「え?」
 
 
その笑顔は、変わらない。
きっと、またすぐに仲良くなれるさ。
だって、ずっと友達だったんだからさ。
だろ?八左ヱ門ーーーーーーー






鉢屋は、当サイトの転生パラレルのキーパーソンです。
10歳のときに記憶を思い出し、いろんなことがあって、今に至るという・・・
あああ書きたいっすいろいろ!